このページは、M&Aの検討時に確認する論点を説明するための想定例です。実在企業の成約実績や、当センターが支援した個別案件を示すものではありません。
東京の中小企業が会社売却や事業承継を考えるとき、後継者、従業員、取引先、設備など、優先したい条件は会社によって異なります。ここでは6つの検討例を通じて、初回相談前に整理する資料と、候補先に確認することをまとめます。価格や成約可能性を一律に予測するものではありません。
1. 後継者が不在で、第三者への承継を検討する場合
経営者が退任を考えていても、引き継ぐ人、時期、退任後の関わり方が決まっていない、という想定です。まず、親族・従業員への承継と第三者承継を比較するため、希望時期と事業を続けるうえで必要な役割を整理します。
- 準備するもの:株主構成、役員・従業員の役割、経営者が担当する顧客・業務の一覧。
- 確認すること:候補先の経営体制、代表者の引継ぎ期間、拠点や屋号についての希望。
2. 同業の会社への株式譲渡を検討する場合
同じ業界の候補先に、会社の強みを伝えたいという想定です。事業を理解してもらいやすい面と、競合に顧客名・単価・技術などを伝える際の慎重さを、両方考えます。
- 準備するもの:社名を伏せた事業概要、売上・利益の推移、共有可能な情報の一覧。
- 確認すること:開示先・目的・時期、秘密保持、交渉が成立しなかった場合の資料の取扱い。
3. 東京の商圏や拠点を広げたい候補先と話す場合
候補先が、新しい地域の顧客基盤や拠点に関心を持っているという想定です。「東京にある」という説明だけでなく、商圏、取引先との関係、現場の体制を具体的に伝えます。
- 準備するもの:拠点別の収支、顧客の地域分布、店舗・工場・事務所の契約、現場責任者の役割。
- 確認すること:拠点を残す方針、既存拠点との役割分担、運営資金と人材の計画。
4. 従業員の雇用や働く場所を重視する場合
売却価格に加えて、従業員の待遇や勤務地を大切にしたいという想定です。守りたい条件を具体化し、候補先の説明と契約条件を照合できるようにします。雇用維持の結果をあらかじめ保証する例ではありません。
- 準備するもの:雇用条件、担当業務、資格・技能、勤務地、待遇に関する希望。
- 確認すること:説明の時期と担当者、候補先の人員計画、引継ぎ後の相談窓口。
5. 設備投資や成長資金を見据えて資本参加を検討する場合
必要な投資を自社だけで負担するか、外部の資本や経営資源を受け入れるかを比較する想定です。会社全体の売却と一部の資本参加では検討の前提が異なるため、まず目的と希望する関与の範囲を分けます。
- 準備するもの:設備台帳、修繕・更新計画、必要資金、資金の使途、投資後の運営体制。
- 確認すること:出資・譲渡の範囲、投資の実行時期、意思決定の方法、経営者の役割。
6. 長年の取引先との関係を引き継ぎたい場合
顧客基盤が会社の強みである一方、経営者個人に関係が集中しているという想定です。取引年数だけでなく、売上の集中、担当体制、契約の条件、引継ぎの方法を説明できるようにします。
- 準備するもの:取引先別の売上推移、契約台帳、担当者と対応履歴、受注・更新の予定。
- 確認すること:契約上の通知・承諾の確認、取引先への説明順序、経営者が同行する期間。
初回相談に持ち込む3つのメモ
- 目的:退任、成長、雇用維持など、何のために検討するのか。
- 優先条件:価格、時期、拠点、屋号、人材のうち、特に重視することは何か。
- 未確認事項:資料がない、契約が不明、家族と話していないなど、これから整理することは何か。
最初から資料をすべてそろえる必要はありません。社名や詳細資料の共有範囲を確認したうえで、一般的な事業概要から相談できます。個別の契約・税務・労務・許認可は、それぞれの資料をもとに専門家や関係機関と確認します。
公的な手引きは中小企業庁「中小M&Aガイドライン」を参照してください。
